『ひぐれのお客』
『ひぐれのお客』
安房直子・作 MICAO・画 福音館書店 2010/5/25
図書館の書架に並んだ本の背表紙を眺めると、よく手に取られていそうな人気のある感じだなあとか、逆に、古いけどきれいであまり借りられていないのかな、などと思うことがあり、それは、書店で本を見るのとは違う楽しさだ。
この『ひぐれのお客』という本は、ひっそりとした佇まいの背表紙で、どことなくあやしいような雰囲気を醸し出していた。
実際、あやしい短編集です。(褒め言葉です)
子供、鳥、動物、お姫様、おばあさん・・・
児童文学の典型的な登場人物たちが織り成す物語世界の空気は、濃密だ。
妙な緊迫感、思いがけない非日常、誘惑には見えない誘惑。
得体の知れない何かが、お話の奥に潜んでいる。
この感じは、子供の頃に外の世界に対して感じていた怖さに似ているかも。
けれど、世界は怖いだけでなくて、予想外の嬉しい出来事もあれば、巻き込まれた波にのっかてみたら大いに楽しかったということもあるわけで。
お話の濃密な空気はそのまま、読後の満足感でもある。
装丁がシンプルで、大人も手に取りやすい。招かれているみたい。
対象年齢は、「小学校中級からおとなまで」。
収録作品
白いおうむの家 (1973)
銀のくじゃく (1974)
小さい金の針 (1976)
初雪のふる日 (1977)
不思議なシャベル (1978)
ひぐれのお客 (1980)
(エッセイ)絵本と子どもと私 (1980)
どれも70年代に書かれた作品なので、子供の頃に読んだことのある大人の人もいるんじゃないかな。
私は「初雪のふる日」が特に心に残っていますよ。