『ローズの小さな図書館』
『ローズの小さな図書館』
キンバリー・ウィリス・ホルト 作 谷口由美子 訳 徳間書店 2013/7/31
一つ一つの短編小説が、時代の雰囲気まで写し出したポートレートのよう。
舞台はアメリカ。フランス系移民の多い、ルイジアナ州。
1939年のローズ(14歳)から始まり、ローズの子や孫である十代の少年少女を主人公にした連作短編集になっている。テーマは、図書館だったり、本だったり。
パール・バックの『大地』から『ハリー・ポッター』まで、それぞれの時代の人気の本がいくつも、お話の中に出てくる。
1939年の短編は時代物テイストもあるが、章が進むにつれ、児童文学風、ヤングアダルト風へと、味わいが変化していくのも楽しい。
物語の風景や生活を見ていると、時間旅行をしているみたい。
この作品がどんなに優れた楽しい傑作なのかを伝えるために紹介を書きたいのだけれど、詳しく書くと、ネタバレしすぎて、読む楽しみが無くなってしまいそう。
ネタバレしない程度に、少しだけ。
第1部 1939年
父が家を出たため、母の故郷ルイジアナで新生活を始めた14歳のローズが、年齢をごまかし、図書館バスの運転手になるところから、家族と本の物語が始まる。
第2部 1957年
ローズの息子マール・ヘンリー(13歳)が主役の短編。母親になったローズは、やはり本が好きで、たくさんの本を読んだり、ノートに物語を書いたりしている。
第3部 1973年
8年生(13歳)のアナベスの物語。ローズは、孫達を移動図書館へ連れて行く、しっかり者の祖母。アナベスは、両親が昔通っていたのと同じ移動図書館に自分も行けることを嬉しく思うような女の子だ。
(私はこのアナベスに共感できる点がとても多かった。)
第4部 2004年
アナベスの息子カイル(13歳)は、70年代のロックが好きで、読書が嫌いだ。しかし、姉のエマは図書館でバイト、カイルもなんだかんだで図書館とつながりを持っている。ローズひいおばあちゃんがカイルに与えた影響に気づくと、思わず微笑んでしまう。
(私がちょっと気に入っているところは、カイルのおじいちゃんがプライドを持った日系人だということ^^)
第5部 2004年
この章は、連作短編集の総仕上げ、クライマックスなので、すべて伏せます。
キラキラした最終章、ほんとーに、素敵!!!
本当に好きなことを、細く長く続けていくことって、できそうで、なかなかできないことかもしれない。それができるのは素晴らしい。
本や図書館が好きな方、アメリカが好きな方、夢をあきらめかけてる方、何かに迷っている方、あたたかい気持ちになりたい方、そんな方々へは特におすすめ。
極上の読後感を楽しんでいただけることと思います。