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児童文学 ときどき アイドル

『ケンスケの王国』

『ケンスケの王国』

マイケル・モーパーゴ作 佐藤見果夢・訳 評論社 2002/9/20

 イギリス「子供の本賞」受賞作品(2000年)

 

無人島に流れ着いた、一人の少年、マイケル。

無人島だと思ったら、一人だけ住人がいた。ベルトに刀をさした老人。

 

この物語は、マイケルが10歳のとき、父親が失業したところから始まる。

失意に沈んだ一家だったが、この父親が、なんと!

なけなしのお金をはたいて、家族三人で航海できる、ヨットを買ってしまった!

そして、三人と犬一匹は、世界一周の航海へと出発する。

 

少年が一人で孤島へ流れ着き、そこで様々な経験を経てたくましく成長する、

というお話は、男の子向けの物語の王道かも。

実際、読者の男の子からのリクエストで、この物語は生まれたそうだ。

 

英国サウサンプトンを出航したヨットは、大西洋を渡り南米へ、

偏西風を受けて喜望峰をまわり、インド洋を渡りオーストラリアへと航海する。

 

主人公が書いた(設定の)航海日誌は、船上の生活がいきいきと描かれている。

地図と航路の挿絵も多くあるので、読みながら航路を辿り、楽しむことができる。

 

そして、マイケルは、孤島に漂着する。

 

作者は外国人名なのに、どうして日本人名「ケンスケ」の王国なのだろう?

と不思議に思ったのが、この本を手に取ったきっかけだった。

訳者あとがきを読んで、その理由がわかった。

終戦後も島に一人隠れ住み、1970年代に発見された日本兵がモデルだという。

横井正一さんや小野田寛郎さんのニュースが、英国の著者にも伝わっていたのだ。

 

外国の人から日本人(日本)がどう見られているのか、私はけっこう興味がある。

この本の作者は日本人についてよく取材しており、好意的に描かれていたと思う。

英国の少年と元日本兵が次第に打ち解けていく様子が、温かく描かれている。

 

男性作家が書く少年主人公の物語は、躍動感と逞しさが魅力だと、いつも思う。

男の子って、女性の書き手には描き切れない部分があるように思うんだ。

うまく言えないけれど。

この本は、きっと男の子読者にも満足してもらえる本だと思う。

 

わくわくする航海と、孤島サバイバル。

びっくりしたり、苦しんだりもするけれど、一つ一つ困難を乗り越えていけば、

楽しいこと、素敵なこともある。

限りなく現実に近く、愛があふれる冒険物語だ。