『雲をつかむ少女』
雲をつかむ少女
生まれたときからインターネットが当たり前に存在していた世代を「デジタルネイティブ」と言うそうです。
デジタルネイティブ、中学二年生の結衣が、この本の最初の主人公。
SNS、動画サイト、ゲーム、ネットアイドル、ブログ、アフィリエイト等ににかかわる人々の、危うさ、楽しさ、苦しさ、共感などが短編小説に描かれています。
前の話の脇役が次の話の主人公になり、次々と繋がっていく連作短編集。小学生から老婦人までが主人公です。
最終話、それまで話に出てきた人たちの様々な形の繋がりが見え、それは、世界を俯瞰するような、パズルが解けるような楽しさでもあります。
生まれた時からの成長記録がずっとネット上に残されている女の子の気持ちや、就活の面接に来た学生の情報をネット検索する人事部、小学生が遊ぶゲームでの課金の様子など、きっちり取材しているのだろうなーと感じられました。
児童書として対象読者の年齢を限定するのはもったいなく感じるほどの秀逸さですが、ネットの世界のダークサイドまでは扱っていないという点で、子供向けなのかもしれません。
読書感想文も書きやすいかも。インターネットのいろいろな分野が書かれているので、自分が当てはまる部分を選べて、自分との対比がしやすいです。
スマートフォンを使い始めた小学校高学年ぐらいから中高校生はもちろん、大人の方まで、旬な今のうちにお楽しみください。どの話もサバサバしていて気楽に読めます。
「雲をつかむような」というのは、掴みどころがない、という意味ですが、この本のタイトルは「雲をつかむ少女」で、「雲をつかむような」ではないのです。