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『パンプキン・ロード』

『パンプキン・ロード』

森島いずみ・作 狩野富貴子・絵 学研ティーンズ文学館 2013/2/26

  第20回小川未明文学賞大賞受賞作品 

 

川のハヤ、ゲンゴロウ、雑木林の鳥やセミ、部屋の中を飛ぶホタル、

菜園にホースで水まきする時にできる小さな虹、星空。

キラキラした夏景色の中の、早紀の夏休みの物語。

 

東京で母親と二人暮らしだった早紀は、6年生の夏休み、

八ヶ岳の麓の祖父の家で、新しい生活を始めることになる。

 

早紀の母は劇団員で、公演に訪れた先で東日本大震災に遭い、帰らぬ人となった。

それで、早紀は、会ったこともなかった祖父と暮らすことになったのだ。

 

暗い本ではないから、涼しげな表紙につられて読んでみて欲しい。 

早紀と、早紀の周囲の個性的な人達とのかかわりが、豊かな自然の中で、

一つの物語に織り上げられ、その物語は夏の夕暮れの風のようにさわやかで、

次の季節の始まりをも感じさせてくれる。

 

『パンプキン・ロード』のパンプキンは、ご存知カボチャの意味。

物語の中には、いくつかパンプキンが出てくる。

祖父の煮るカボチャ、清里のペンション「ぱんぷきん」、

亡くなった母の口癖「土手カボチャ!」、美味しいお料理土手カボチャスープ。

 

いろいろな材料を混ぜて煮込んだ土手カボチャスープ。

おいしくなれ。おいしくなれ。みんな混ざりあって、もっとおいしくなれ。

                              (p163)

きっと、悲しいことも、嬉しいことも、全部混ざり合って、

人生は味わい深くなるのだろう。

  

課題図書ではなく自由な本を読んでの感想文にも向いていると思う。

この本から受け取れるメッセージはたくさんあるから。

 

私は、おじいさんの親としての気持ちを思ってしまった。

きっと、大切なことを言えないまま、会えなくなってしまったのだろうな。とか。

圧巻だったのは、早紀が、母から受け継いだパントマイムで、祖父の仕事する姿を

表現するところ。

言葉がなくても伝わっていくものは、必ず、ある。

 

本書の中(P168)で、『星の王子様』からの引用がある。

「たいせつなものは、目に見えない」

 

 目に見えない何かを、この本から受け取って欲しい。

 

 

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