in a Million

児童文学 ときどき アイドル

『イングリッシュローズの庭で』

イングリッシュローズの庭で

ミシェル・マゴリアン 作 小山尚子 訳 徳間書店 1998/6/30

 

美しい表紙に包まれた、秘密めいた青春小説の本です。 

 

17歳のローズは、姉のダイアナと二人で戦禍のロンドンを離れ、海辺のコテージ「千鳥荘」に疎開してきた。1940年代(第二次世界大戦中)のイギリスが舞台。ローズは千鳥荘で、秘密の日記帳を見つける。日記帳につづられた過去の謎と、現実にローズの周囲で起こる出来事が絡み合って、物語は進む。

 

「刑事フォイル」というイギリスのドラマを見始めた頃にたまたま出会った本で、時代も国も同じ。タイミングが良かったため、このドラマとこの本、視覚的なものと知識的なものを相互補完するようで、わかりやすく楽しく読めました。

 

歴史的な内容、恋愛体験、友達の出産などの内容を考えると、児童書というより、ヤングアダルトと言うべきかも。十代後半から、青春ものが好きな大人の方まで楽しめる読み応えのある本です。

個人的には、素敵な男性とマヌケな男の子の容赦ない対比が秀逸で笑えました。素敵な方はどうか知らないけどマヌケな方はあるあるなので内向的文学少女(今時まだいるのかしら)はこういう本を読んで賢く対処できるようになって欲しいなと思います。

 

作者のマゴリアン氏、表現力と構成力が素晴らしく豊かです。海辺の町の風景描写はまるで絵画を見るようだし、人間を内面から描く力は圧倒的。何気ない文章で表されたそのに奥に、心の動きや感情など多くのものが隠されているように感じます。日記帳の中の出来事と主人公の周りで次々と展開していくお話は、どうなるのだろうと興味深く、読む者の心を惹きつけてやみません。

主人公ローズが個性的で面白い子なので共感したのですが、主人公の周囲にいる年齢性別境遇さまざまな登場人物たちそれぞれの個性が、この作品の厚みとなり、味わい深さとなっています。

 

「てっぺんからは始められんのだよ、そうだろう?」
脇役の一人、果物屋のウィルソン氏の言葉です。
町の人たちが、ローズを「作家」と言うので、
「あんた、作家なんだって?」とウィルソン氏は尋ねます。
「あの、まぁ、正確にはそういうわけではないんです。まだ短編が一つ採用されただけなんですから」と、ローズは赤くなりながら答えます。
するとウィルソン氏は、とてもいいことだ、てっぺんからは始められない、段階というものがある、とローズを励まします。
ウィルソン氏は、12歳の時に一箱の古リンゴを売るところから始め、自分の果物屋を持てるようになった人です。
このように、少しだけ出てくる人でも、前向きになれる言葉を主人公にかけてくれるのです。

 

戦時中の小さな海辺の町で、悩んだり困ったりしても、それを乗り越えていきながら、美しく逞しく成長していくローズとダイアナ。笑いあり、涙あり、戦時中ならではのエピソードもあり。ドラマチックな展開を、きっと楽しめることと思います。

 

 Amazonのカスタマーレビューがどれも良いので、興味有る方はご覧ください。

こちら→ イングリッシュローズの庭で