『キキとジジ 魔女の宅急便〈特別編その2〉』
『キキとジジ 魔女の宅急便〈特別編その2〉』
魔女の宅急便といえば、ジブリ映画を思い浮かべる方は多いと思う。
児童書としての魔女の宅急便シリーズは、1985年に1巻が出版され、キキが成長して、大人になり、2009年に6巻で完結している。
6巻を読み終えた時には、キキの物語は全て終わったんだなぁと寂しかったけれど、最近になり、特別編が二冊出版されていて、ファンには嬉しい限りだ。
『キキとジジ』は、キキが魔女になる前のお話。
キキが生まれてすぐの赤ちゃんの頃から、幼児を経て、四年生まで。
小さなキキと、しっかり者の黒猫ジジ、二人それぞれが主人公の短い物語集。
この本を読むと、クールに見える黒猫ジジが意外と悩み多き猫だったことがわかって、ほほえましい。なんだか幼い兄妹を見ているみたいな気持ちになる。
角野栄子さんのお話は、日常をじっくりとあたたかな眼差しで見つめて、どこかおかしみのある小さな事件を淡々と描く中に、気づきや、楽しい工夫が隠されているものが多い。
赤毛のアンシリーズの描き方と、ちょっと、感じが似てるかな。
この本は、ちっちゃいキキとジジの短編集として、これだけでも楽しめると思う。
でも、シリーズ6巻を読破している人のための特典と言えるような気もする。
最新刊が出版されるのを楽しみに、キキの成長を見守りながら読んでいた方々が、キキとジジを懐かしんで読むのにちょうどいいんじゃないかな。
きっと、魔女のいる町独特の空気感も、時間の流れも、本を開いたとたんに懐かしく胸に広がることだろう。
ところで、最近話題のカップヌードルのCM、あれは原作に近い世界観だなと思って見ていた。
2時間の映画にするには、キャラの個性を強めたり、話にアクセントをつけたりする方がいいのだろうけど、原作のキキはふつーの女の子だし、すごーく日常的なお話の連なりだから。
あのCM、私は好きです。
魔女の宅急便シリーズ
1985年 魔女の宅急便
1993年 魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法
2000年 魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女
2004年 魔女の宅急便その4 キキの恋
2007年 魔女の宅急便その5 魔法の止まり木
2009年 魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち
(福音館文庫版、角川文庫版も有り)
2016年 キキに出会った人びと
2017年 キキとジジ
映 画
1989年 魔女の宅急便(アニメ)
2014年 魔女の宅急便(実写)